2022年07月05日
育休を取得することになり、ありがたい一方で仕事上の不利益を被るのではないか、復帰後どうするのか、自分のキャリアをどう描けばよいのかと不安を感じたことから、男性女性を問わない課題であることに気づく。家事・育児と並行しながら本業とは違うさまざまなインプットを経て、育休の生活自体は楽しく過ごしている。3子のパパ。
一人目、二人目は育休をとっていなかったので、パートナーにどうだった?と聞いてみたら、一番の変化は「家事・育児の分担以上に、相談できる相手が家にいるという点が良い意味で大きい」と言っていました。
一人目、二人目のときは妻は育休をとっていましたが私は働いていたので、しゃべり相手が子どもしかいないという状況でずっと家にいたため精神的にもつらかったようです。思考も目の前のことしか見えなくなってしまっていたので、課題を話し合うことができる相手がいるということはすごく大きなことで、大事だと思っています。
家事に関しては明確な役割分担をしないようにしています。理由としては、妻も私もオールラウンダーとして一連の流れができるようになろうという意識からです。現在は、私が家事7割、妻が育児7割ぐらいの割合でやっていますが、家事も育児も、最悪、お任せしたら一日安心して出かける事ができるという状態にまでスキルをあげました。
例えば育休を1週間とるだけだと、丸一日任せられるレベルに達するには相当な意気込みを持って挑まないと身に付けられないと思います。その意味でも長期の育休を取得したのはよかったと思います。
妻が外に出られなくなってしまうのはよくないと思うし、僕も出かけられないのが嫌なので、お互いが育休期間どうしたいか話し合ったり共有したりしておくのが大事だなと思っています。一日任せられないというのは、家事や育児の能力・スキルが足りてないから任せられないんだよということを男性側に理解してもらえるといいかもしれません。
パートナー側としても家事や育児を男性に任せると不安な気持ちがあって、思わず「やらないでよ」と言いたくなることもあると思うんですけど、パートナーが一人でできるようになるまで家事や育児を取り上げない、相手を育てる。夫婦としてどのレベルまで家事育児レベルをもっていくかということを話し合われると良いのではないかと思います。
私は育児に関してわからないことがあったり、困ったりしたときにはどうしたらよいかと聞くんですけど、聞かないときに口を出すのはやめてほしいです。困っていないときに「そのやり方違うよ」と言われるとモチベーションが下がってしまうので・・・。途中でちょっとしたケンカはありましたが、最終形が共有されていれば継続できるんじゃないかなと思います。
育休後アドバイザー以外に、MBA(経営学修士)を取ろうと思って大学院に通っています。そこで学んだのは企業側の目線や文脈です。さらには当事者と企業の双方の目線が合わないとうまくいかない事です。企業として生き残っていくうえでは多様性を許容して新たな発想を生み出していく必要性もありますし、企業が成長していくためにも育休や多様な人材が企業内にいるということがすごく大事だなと感じています。
外部の環境は変化していますし、VUCA(予測困難)の時代です。イノベーションを起こそうとしている企業も多いと思いますが、既存企業が新規事業を産みだし成長させるためには「忘却」「借用」「学習」の3つの課題があると言われています。特に既存の組織はこれまでの成功体験や慣習に縛られがちです。
まず企業としての成功体験を「忘却」する事が重要ですが組織内で働いている以上、「忘却」が難所になる場合が多いのではないでしょうか。育休を取得することでいったん会社の前例や経験を忘れ、新たな考え方を取り入れた人材が数多く活躍することがイノベーションを起こす上で有益に働くと思っています。
育休後アドバイザー養成講座での知識もそうですが、新たな知識を得ることで育休前とは違った考え方やモノの見方ができるようになりました。個人的な意見にはなりますが、仕事をしていると、まったく違うジャンルの情報をインプットしようとは思わないですが、育休中だからこそ仕事とは違うインプットをすることができ、新たな視点を獲得し、自身も組織もさらなる成長につながっていくと感じています。
結婚した時に定年ぐらいまでの夫婦の年表をつくっていまして、年1回の結婚記念日に見直しをすると決めています。お互いがやりたいこと、この時期にはこうしていたい、こう成りたいというお互いの希望を落とし込んで共有をしています。
私は今、大学院に通っていますが、それが終われば子供の面倒を見る割合を増やすので妻が勉強やスキルアップにかける時間を増やす事にしています。そういった話し合いの土台をつくるという意味でも、この年表は有効です。お互いがズレなく認識できるように視覚化することが大事ですね。
育休をとる前は、取ったらいけないんじゃないか、どのぐらい取っていいんだろうか、法的にはどうなっているのか、など思い込みや分からないことだらけでした。育休期間は給料泥棒的になるんじゃないかと思ったりもしていましたが、国からお金が出ていることがわかったり、税金がかからないこともあって何とか生活できるレベルだったということもわかったりしました。
育休後アドバイザー養成講座では、性別役割分業の考え方だったり、これまでの日本の雇用慣行で当たり前だと思っていたことが、そう思い込んでいただけなんだなということを知ることが出来ました。育休も法律改正で、企業として従業員に周知しなければならないという流れになっているなど、そういった知識をみなさんにも正しく知って頂くことが育休取得につながっていくと思っています。
同時並行でMBA(経営学修士)と国家資格キャリアコンサルタント取得のための学習をしています。自身の育休の経験と育休後アドバイザー×MBA×キャリアコンサルタントで、自分の価値が出せないかなと思っているところです。
育休を取り巻く状況で課題感を持っている事は、育休や女性活躍という話が、企業側の文脈で話されていないことが多く、企業の中心部で話が進まず、ボトムアップで変えようとしているけどなかなかうまくいかないケースも有ると思っています。そこで経営に近い部分で提案ができたり、HR的な部分でメリットの話をすることで、企業と従業員の橋渡しができるようになればいいなと思っています。
ありがとうございました。女性と仕事研究所事務局 藤本(育休後アドバイザー)
(取材:2022年05月/所属・役職名等は取材時のものです)