No.31 生きることと働くこと、自分の喜びとまちの喜びが一体になるまちづくり|特定非営利活動法人 女性と仕事研究所

SDGsでキラリ輝く大阪をつくる女性たち

No.31 生きることと働くこと、自分の喜びとまちの喜びが一体になるまちづくり

2021年08月25日

杉本 容子(すぎもと ようこ)さん
株式会社ワイキューブ・ラボ代表取締役 一般社団法人水辺ラボ代表理事(大阪サクヤヒメSDGs研究会まちづくり部会メンバー)

現在のお仕事の内容をお聞かせください。

都市計画や、まちづくりのコンサルタントをしています。
行政やまちの人からの依頼で、どうやったらまちが魅力的になるか考え、調べ、実践し、伝えることを提案する仕事です。
歴史的環境を活かした魅力づくり、水都大阪の再生、まち全体のビジョンづくりなどが主なテーマです。

株式会社ワイキューブ・ラボは女性ばかり4人の事務所です。この分野ではとても珍しく、女性ならではの感性や視点を大切に、しなやかにまちづくりの仕事をやっています。
生きることと働くこと、自分の喜びとまちの喜びが一体になるようなまちづくりコンサルタント事務所を目指しています。
水辺の倉庫をリノベーションして、1階を事務所、2階を私の自宅にしています。現代版の町屋です。小学校2年生の娘がいるので、職住近接しながらなんとかお母さんとまちづくりコンサルタントの2足の草鞋をはいています。

2021年8月からは、新しい仕事がスタートします。地域活動の延長として立ち上げた一般社団法人として、水辺の公園施設「β本町橋」の運営をスタートします。
提案だけでなく、実際の運営も仕事とすることで、よりよいまちづくりの提案ができるようになることを目指しています。

お仕事以外で、何か活動(趣味、地域活動など)をしていらっしゃいますか?

一般社団法人水辺ラボは、東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)という地域活動から派生したまちづくり組織です。e-よこ会は、東横堀川の水辺を魅力アップするまちづくり団体で、10数年来、個人的に活動に参加してきました。水辺のお掃除をしたり、まち歩きのガイドをしたり、地域の方々とともに、地道に活動を続けてきました。そういった活動が結実して、β本町橋の運営に仕事として関われるようになりました。仕事にすることを目指してきたわけではありませんでしたが、私の人生を豊かにしてくれたたくさんの出会いをくださったe-よこ会の活動が、新しい仕事の展開につながったことに、感謝しかありません。

これまでの人生を振り返ってみて、困難はありましたか?また、どうやってその困難を乗り越えられましたか?

いろいろありましたし、まだまだ困難の連続です。同じことをずっとやっているよりも、どんどん次のことがやりたくなってしまう性分なので、困難が多いような気がしますが(笑)

今でも困難なときに思い出すのは、大学院時代に初めて会った方にかけていただいた言葉です。私は大学院時代に、近世から続いている大阪市内の集落環境の調査をしていました。大都会において生き残っている前時代の都市構造が、未来のまちづくりに大きなヒントをくれていると確信していたからです。ただ、その想いをどのように工学的な博士論文として表現するかにすごく迷っていました。とにかくまちを訪れては、昔からお住まいの方々にお話を伺っていました。その時、旧長居村の神社の宮司さんに言われました。「人間の目は、近づきすぎるものは見えない構造になっている。物事が見えなくなっているというのは、真実に肉薄しているから。あきらめずにそのまま前に進みなさい」と。

困難に出会って迷った時には、いつもこの言葉を思い出します。そして、「いま前が見えないのは、真実に近づいているから」と自分を落ち着かせて、勇気をいただいています。もう20年も経ちますが、いまだに忘れられない言葉です。

SDGsに興味をもったきっかけは?

地球温暖化やオゾン層の破壊などが世間で話題になったころ、私は高校生でした。湾岸戦争が起こり、ニュースで油まみれの鳥がよろよろと歩いていました。それを見たときに、「このままでは地球が危ない。誰かが地球を守らなきゃ」と本当に思ったのです。ちょうど大学の進学先を考えていた時期だったので、地球を守る勉強ができる学科を探し、日本でいち早く環境工学科をつくった大阪大学への進学を決めました。
当時、SDGsという言葉はありませんでしたが、いま思うとその時が持続可能な社会への強い想いが芽生えたときだと思います。

ご自身のお仕事や生活の中でSDGsをどのようにとらえていますか?

もともと地球環境を守る「地球防衛軍」を目指して大阪に進学した私でしたが、いまはローカルを豊かにするまちづくりの仕事に就いています。高校生の時はグローバルから地球にアプローチするイメージしかなかったのですが、実際に大学で勉強してみると、ローカルアプローチというものがあって、そちらのほうが自分に合っていて楽しく続けられそうだなと思いました。それがいまの仕事につながっています。ただ最近は、グローバルとローカルが本当に同じところに向かっていることを強く感じます。

自分があって家族があって地域があって日本社会全体があって、その先に世界や地球がある。そんな自分を中心としたドーナツ状の関係性の中で私たちは生きて、働いています。そこを意識しながら日々暮らしていると、自分の事と家族の関係性を考えることと、地域や社会、地球全体との関係性を考えるのは同じなんだということに気がついてきました。相手に対してごまかしたり、嘘をついたり、正面から向き合えなかったら、世界も地球も大切にできない。ですので、家族を犠牲にして仕事をするやり方はしないと決めています。もっと言うと自分も犠牲にしないようにしています。自分がハッピーじゃないと周りをハッピーにできないですよね。それがSDGsの考え方に近いのではないかと思っています。

大阪・関西の女性がキラリ輝くために、何が必要と思いますか?

私は大学生の時から大阪・関西のまちに関わって研究や仕事をしてきました。大阪・関西のまちの人たちが応援してくれて、場を与えてもらったから、色々と経験を積むこともできたし、社会人として成長することができたと思っています。女性だけでなく、若い人全てに、失敗したり成功したりしながら成長できる機会や場があるべきだと思っています。
私もそのためにできることをやっていきたいですし、女性や若い人には、できるかできないかの前に、まずは自分の気持ちに素直なって、どんどんチャレンジしていってほしいと思っています。

さいごに、大阪・関西の女性にメッセージをお願いいたします。

私は関東の出身ですが、すっかり大阪・関西の魅力に取りつかれ、住み・働き続けています。
歴史と文化が豊かで、都心と自然、人と人の距離が近い大阪・関西。
あなたがキラリと輝けば、必ず誰かとつながれると思います。

2021年8月28日、大阪市中央区にβ本町橋という水辺の拠点を立ち上げます。
https://hommachibashi.jp/
川とまちと人がであうコミュニケーションポイントとして、キオスクという名の総合窓口に、私も仲間たちとともに立っています。
ぜひ遊びにいらしてください!
サクヤヒメのみなさんも関わってくださっていますし、いろんな人とリアルにつながれる場です。
いつか本当に出会って、一緒に新しい社会、楽しい未来をつくっていきましょう。
キラリ輝くあなたに出会えることを、私も楽しみにしています!

ありがとうございました。

(取材:2021年08月/所属・役職名等は取材時のものです)

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